その日、私は入学式の会場に向かっていた。
下宿先から自転車で10分ほどのキャンパス。
桜は満開を過ぎ、散りゆく花びらがチラチラと舞って、自転車のカゴにふわりと落ちてきた。

そして迎えた入学式。
「外国語大学だから、もっと国際色あふれてるのかな?」
そんな期待は、すぐに良い意味で裏切られた。
式は驚くほど普通で、校長の話、先輩の挨拶、教授のスピーチが淡々と続いていく。
ただ一つだけ特別だったのは、学年主任の先生が流暢すぎる日本語を話す外国人だったこと。
それが、唯一の「外国語大学らしさ」だった。
そして式のあと、「説明があるから」と言われ、1学年全員が入るほどの大教室に移動することになった。
大教室までの道中、上級生が「入学おめでとう!」と元気に声をかけてくれる。
木から落ちる桜の花びらがふわっと舞い、その間をぬうように部活やサークルの勧誘がずらりと並んでいた。
その熱気にのまれながら、「ああ、今日から本当に大学生なんだ――」
そんな気持ちが胸の奥で静かにふくらんでいった。

大教室に入ると、 みんなが自己紹介をしたり、近くの人に話しかけたりして、 新しい友達をつくろうとしていた。
中には、同じ高校から進学してきたらしいグループもいて、 入学式の華やかさと新生活への期待が混ざりあった 若い活気で教室全体が満ちていた。
私はというと、ちょこんと椅子に座って、話しかけてくれた子と少しだけ言葉を交わしたりしていた。
すると、目の前に、さっきの日本語ペラペラ外国人主任が現れた。
「はい、静かにしてくださいね〜」
と、これまた完璧な日本語で場を仕切りはじめる。
しばらくして、ガヤガヤが沈まてきたあと、外国人主任は、今後の流れや初授業の日程などを確認した。そして…
クラス分けについて話し始めた。
「これから、みなさんの TOEICの結果 を返しますね〜。」
「結果をもとにクラス分けをしていますので、廊下に貼り出してある一覧で自分のクラスを確認して、その教室に行ってくださいね〜」
この大学では、入学者全員にTOEICを受けさせて、その点数でクラスが決まるらしい。
入学式の2週間前、私はまだ北陸の田舎町にいた。 合格通知が届き、家族も本当に喜んでくれた。
その喜びの余韻の中で、 私は新生活の準備に明け暮れていたのだが——
ちょうどその頃、大学から 「入学前にTOEICのテストを受けてください」と連絡が来ていた。
そこで私は、たった1日だけ京都へ行き、 TOEICを受け、下宿先を探し、そのまま慌ただしく帰宅したのだった。
正直に言うと、このときの私は「TOEIC?……何それ?」という感じだった。

受験英語には全力以上で取り組んだ。
英文も読んだし、単語も覚えたし、
リスニングCDも毎日聞いて、「必死」という言葉がこれほど似合う奴なんていないと思っていた。
でも、TOEICは違った。
(当時は今ほどメジャーじゃなかった… のか、それとも私が田舎者すぎて知らなかっただけなのか)
受験で燃え尽きた私は、TOEICの勉強をする余力などなく、新生活の準備と引っ越し、”都会”での大学生活で胸がいっぱいいっぱいだったのだ。
今思えば、この時点でもう「英語をこじらせる未来」は薄っすら始まっていたのかもしれない。

→画像は引き続きAIで生成しています(髪型が急に変わってる!などのツッコミも受け付けています)
気に入ったら、気軽にコメントよろしくお願いします!
→続きを読む

コメント